今年度は、学校という教育機関で学ぶ生物学の特徴を明らかにするために、幼稚園や小学校の教師が、生物学的現象の指導に際して、どのような説明やフィ-ドバックを子どもに与えるのかを検討した。 〈観察〉幼稚園年長組で貝われ大根の種を蒔く(但し土の上でなく水を含ませたスポンジの上)場面、小学校1年生のクラスにおいて、ミニトマトの栽培での植え替えの場面で、それぞれ教師がどのような説明をするのか、そこで子どもが示す疑問や不適切な行動に、教師はどのようなフィ-ドバックを与えるのか、などを実際に観察した。その結果、幼稚園教師だけでなく、小学校教師もかなり擬人的な説明をすることが見いだされた。植物が本来持っていない特性にまで人間の持つ属性を付与するような擬人化しすぎの傾向もあった。 〈実験〉幼稚園教師と小学校教師、各約50名に対して、飼育栽培場面でどのような説明や言葉かけをするかを質問紙調査により調べた。飼育栽培の場面に関して子ども(幼稚園の5歳児または小学1年生)が適切でない行動や発言をしている仮設的場面を設定し、このような場面で幼稚園教師と小学校教師が、それぞれこの幼児、小学生に対してどの様な説明をするかを記述させ、その説明を「擬人的な説明」「科学的な説明」「不適切行動を止めるだけで説明はしない」の観点から分類した。さらに5種類の説明ーー生理的機構に基づいた科学的説明2種、擬人的説明2種、事実の記述のみ1種ーーを提示して、幼児、小学生に最も適切な説明を順番をつけて選択させた。その結果、幼稚園教師、小学校教師ともに、擬人的な説明を多用することが見いだされた。小学校教師は、小学1年生を幼いものと見る傾向が強く、これが擬人的説明への選好につながっている可能性が示唆された。
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