研究概要 |
平成2年度において,母音の正規化能力の発達的側面と,新生児の母国語と非母国語の弁別について,実験的な予備研究を行なった。その結果を踏まえて,今年度は新生児の母国語と非母国語の弁別で,非母国語を英語以外の,ドイツ語,フランス語,韓国語について,同様な実験を試みた。 英語と日本語の比較においてみられた現象以外に,今回の実験で新しく得られた知見は 1) 韓国語と日本語の比較は,他の言語と異なり,吸啜数の変化に差がなく,新生児には,同一言語として知覚されているのではないかと予測された。 2) 非母国語同士の比較においても,音声刺激の変化した時点から吸啜数が変化し,英語ーフランス語の比較において,最も著しい差がみられた。 3) ただし2)の場合,英語は女声,フランス語は男声であったため基本周波数の違いに反応したことは十分考えられる。 このような実験を行う場合,バイリンガルの発話者を見い出すことが非常に困難であった。フランス語,ドイツ語の発話者は男性で,それぞれ非母国語が日本語であったが,その日本語は我々日本人が評価すると母国語の影響があり,日本人の発話者ではないことが聴覚的印象からだけでも明らかだった。今後、この点についての影響がどの程度反映したかについて,解明すべきであろう。
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