著者は、愛他行動を規定する認知機能の役割(1989)において、愛他行動の発達における、情況的抑制要因と促進性個人内要因について検討を行い、発達的に2つの異なる要因が影響することを明らかにしてきた。本研究では、さらに児童の愛他行動の動機についての情動反応の検討を行なった。 すなわち、高野(1989)による欲求ー価値理論によって、愛他行動の動機を説明するために実験が行なわれた。 まず、手続きは、絵画を使用した、愛他行動の動機づけの検討において、援助行動、寄付行動、救助行動の3つに分類された場面での動機のそれぞれは、物理的報酬への期待、社会的報酬への期待、自己報酬による動機の3つカテゴリ-に、分類された。 その結果から、2年生、4年生、6年生の比較において、寄付行動においては、6年生のみが、有意に、大きな自己報酬による、動機づけを示すことが明らかになった。また、援助行動と救助行動においては、各学年における動機づけの発達の特徴が、見られた。これは、川島(1989)の、研究における、予測と一致している。すなわち、物理的コストと緊急度によって分類された。3つの愛他行動は、その発達の過程で、促進性個人内要因と情況的抑制要因によって、異なる発達の過程を示すと言うことである。 これまでの、一連の研究と同様に、本研究でも、手続きは異なり、絵画を使用した愛他行動場面であっても、川島の仮説が検証されたといえるであろう。さらに、愛他行動の動機づけについては、欲求ー価値理論によっても、説明が可能であろう。これは、今後の研究課題となる。
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