本研究は、教師としての適性について、総合的に診断するシステムを構築し、毎日の授業における授業の仕方、学級運営に役立てることを目的とした。まず、初年度においては、現場の教師を対象として、教師の指導法について多面的に調査し分析した。それに続いて、その担任の教師とそのクラスの生徒の双方に調査を実施した。そして、教師と生徒の認知のズレが教師の指導法や生徒の学習面にどのような影響を及ぼしているか社会心理学的な側面を入れながら解析した。 担任の教師とそのクラスの生徒を対象として、教師には、指導観と実際の指導法について、生徒には、日頃の教師の指導法と望ましい教師の指導法という側面、およびクラスのスク-ルモラ-ルについての調査を実施した。 まず第1に、教師の自分の授業に対する認識と生徒の教師の指導法に対する認知にどのようなズレがあるか解析する。その結果、生徒の自主性や生徒参加という、従来の一斉指導形態にそぐわない面での教師と生徒のズレが大きいことなどが明らかとなった。第2に、従来、教師の指導法と生徒の認知という、いわば教育心理学的な側面からの分析が主流であったが、今回、社会心理学的な視点を導入し、学級の雰囲気、スク-ルモラ-ルなどが教師の指導法によってどう違うか検討した。そして、学級の雰囲気が教師の指導法によってかなり異なること、生徒が主体的に学習することがいかにクラスの雰囲気を盛り上げているかが明らかとなった。第3に、クラスの生徒数の多少(クラスサイズ)と教師の指導法、学級の状況との関連性について分析した。教師が自分の確固たる指導法を活かすには、ある程度の規模のクラスが望ましい。やはり40人もいると、ひとりひとりの生徒の個性を伸ばすことが無理であると判断せざるを得ないという教師の側面が写し出された。
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