本研究で開発された神経心理学的パフォ-マンス・テストを用いて、(1)ブックレット方式による集団実験(男42名、女43名)(2)ブックレット方式による個別実験(男44名)(3)カ-ド方式による個別実験(対象者は(2)に同じ)が行われた。ブックレット方式の集団実験と個別実験の比較から、このブックレット方式は集団及び個別実験の双方に使用可能であり、正答数の差異のないことが確かめられた。また個別実験で同一の対象者に行われたブックレット方式とカ-ド方式の正答数の相関分析から、両者はほぼ同一の現象を測定していることが確かめられた。以下主として、ブックレット方式による個別実験と集団実験の男での結果をまとめて報告する。 (1)本テストが実際に脳機構と関係する証拠として、左利きでの文字及び絵の正答数の低さをまずあげることができる。 (2)本テストが個人に特有な利き脳を測定していることの証拠として、右利き群の中での潜在的ラテラリティとの有意な関係をあげることができる。すなわち、左半球の優位性と関連したラテラリティ指標は文字の成績と、そして右半球の優位性と関連したラテラリティ指標は絵の成績と結びついていた。 (3)(2)の結果は認知様式(分析・抽象性の高さ)と複雑に関連しており、文字および絵は分析・抽象性の低さと結びつきながらラテラリティ指標により分化するという特徴を示した。 (4)脳電図トポグラフィ-を用い、16個の課題を遂行中のアルファ-波の変化を13名の対象者で観測し、課題別、個人別の因子分析を行い、課題のまとまりと個人差の問題を追求した。
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