今年度は、前年度に行った視覚実験を脳損傷患者を対象に行った。実験1では視覚的に提示した平かなからカタカナをイメ-ジし、左払いが含まれるかどうかを判断させた。その結果、イメ-ジ産出の責任部位といわれている左頭頂後頭葉に局所損傷を持つ患者は70%程度の成績にとどまり、100%の成績を示した右頭頂後頭葉損傷患者とは異なることを示した。実験2として行った実験1と同じイメ-ジ産出課題実験では、頭頂後頭葉損傷患者を除いた患者で、右半球、左半球群とも成績に差は認められなかった。つまり、左半球を損傷しても、頭頂後頭葉外の部位であれば、イメ-ジ産出に影響がないことが示唆される結果がえられた。実験3として、イメ-ジを心的移動させる新しい課題を用いた。これは、漢字のヘンとツクリをバラバラにして提示し、それらを心的に移動させることで、正しい漢字ができるかどうかを判定させる課題である。被験者には左半球に局所的損傷のある成人と右半球に局所的損傷のある成人の2群であった。結果は、左半球損傷患者で失語のない患者での成績は右半球損傷患者よりも優れることが判明した。この結果は、イメ-ジを操作させる課題では右半球の関与が左半球に比べて大きいことを示唆するものである。 実験3と同じ課題を健常成人を対象に実施し、実験4とした。結果は右半球機能より強い関与を示めすものとなった。 以上の一連の脳損傷患者での実験結果と前年度の健常成人での実験結果から、イメ-ジに関する左右脳の役集について検討した。その検討結果は研究成果報告書に示すとおりである。
|