イメ-ジと脳機能との関連を検討するために7つの実験を行った。初年度は、健常児童および成人を対象にアラビア数字から漢数字をイメ-ジ産出する課題や、回転を加えた数字との比較判断を求めるイメ-ジ操作課題を実施した。 最終年度では、脳損傷患者と健常成人を対象に別なイメ-ジ産出課題(平仮名文字からカタカナ文字をイメ-ジし、左払いが含まれるかどうかを判断する)とイメ-ジ操作課題(漢字の偏とつくりをイメ-ジ上で心的に移動し、真の漢字かどうかを判断する)を実施した。 結果は、左頭頂後頭葉損傷患者ではイメ-ジ産出課題での成績が右頭頂後頭葉損傷患者に比べて劣ること、左半球損傷患者であっても頭頂後頭葉以外の損傷ではイメ-ジ産出課題での成績に影響が認められないことを示した。これは、「イメ-ジ産出過程は右半球の機能ではなく、左半球の機能である」という主張を支持するものと考えられる。 一方、イメ-ジ操作課題では、左半球損傷患者で失語のない場合と右半球損傷患者での比較から、右半球の関与の強いことが明らかとなった。健常成人での結果も同様であった。したがって、イメ-ジの下位要素別に脳の関連部位を検討した場合、左右脳が異なる関与の仕方をしていることが明らかとなった。
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