研究概要 |
気質に関する測定具は主として,乳幼児および子供を対象としていて,成人用のものは少なかった。本研究は成人用気質尺度の作成を目的とした。従来使用されている気質尺度は主としてアメリカの心理学を背景し社会環境に重きを置いていたが気質の研究には,生物学的要因を無視することはできない。本研究では神経系の興奮と制止の強さと神経系の易動性という3要因を反映する行動を中心に質問項目が集められた。研究の第一歩として252項目を主として大学生に施行し,項目分析が行われた。興奮の強さ(SE),制止の強さ(SI),易動性(MO)の各尺度はさらに下位尺度に分けられて,全体一部分の相関係数により,不適切または不充分な係数値を示した項目を除去し,計量心理学的に強固な項目よりなる尺度の作成を行なった。除去の基準として,該当する尺度内での相関係数が有意でないもの,他の尺度と高い相関を示す項目を尺度から省くようにした。SEとSIではそれぞれ8下位尺度,MOでは6下位尺度が作成され,各尺度5項目ないし6項目を含み,合計,120項目からなる気質質問紙の完成を目指している。 平成3年度には,この新しい尺度と従来使用してきたアメリカ製の気質尺度との相関を検討し,下位尺度がどの気質特性と対応するかの検討が行われる。平成2年度の成果は,平成3年9月にポ-ランドで関催される気質研究ワ-クショップで発表されるようになっている。
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