研究概要 |
奈良女子大学教育方法学教室及び研究者の併任地の山口大学医学部に心理治療のため受診したクライエント8名に対し受診後1ケ月以内にロ-ルシャッハ検査を実施し、更に症状の改善した4名について3〜7ケ月後に再検査を実施し、両検査結果を自我機能(河合、クロッパ-による)の側面から比較検討した。 症例1;21才男性、対人恐怖、受診当時対人不安のため就職も不能であったが6ケ月で軽快、就職した。初回は重度の神経症水準で灰色図版への不安反応が顕著であったが治療後はそれらが消失し現実吟味や対人関心の自我機能が増大した。ただ情緒的統合性は不十分なままであった。 症例2;22才女性、心因反応、受診当時大学へ登校不能で関係念慮等病的症状があったが治療後は一応症状は消失した。初回はdd,de,dr反応が多く「核心に近づく怖れ」の強いやや病的反応であったが治療後は減少しD反応が増加、現実吟味力もやや回復し、自我機能が増大した。 症例3;8才女性、登校拒否、初回は「火事」「焔」等の情縮統制の乏(さや「殺している」「食べられている」等被害感を示す反応がありいじめによる登校拒否を示唆していた。3ケ月の遊戯治療等で回復し登校可能となった後の再検査では被害的反応の消失が顕著であった。 症例4;28才男性、アパシ-,初回年令,学歴(大卒)に比し極めて貧因な反応で自我機能の貧因さを示唆していた。7月の精神療法で就職する意欲出現した段階で再検査を実施したが検査結果は初回と本質的に変化がなく、検査では自我機能に好転の証拠は得られなかった。 結論;心理治療等による症状の改善はロ-ルシャッハ検査の自我機能の何らかの側面に反映することが多いが症例4の如く一致しない例もあり、検査結果はおそらく予後評定の大きい参考となると考えられるが未だ少数例であり今後も症例を積み重ねて検討していく方針である。
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