研究概要 |
本研究の目的は・幼児・児童の課題解決過程における個人差の問題を情報処理の側面から明らかにすることであった。幼児の認知スタイルと自由遊び場面での行動に関する2年度にわたる縦断的な研究の結果,次のようなことが明らかになった。1.衝動型ー熟慮型次元の認知スタイルの安定性は,この年齢段階では低いという従来の研究結果と異なり,年中児から年長児にかけて幼児の反応潜時と誤反応数は安定していること.2.同相に,場依存型ー場独立型を測定するための課題において,成人では林部からの刺激による干渉や促進を比較的受けにくいのに対し,幼児では干渉や促進がみられるという反応の特徴がみられた.これは,幼児と成人では情報処理の速さが異なることや選択的注意などの能力の違いを示唆する結果であった.4.幼児の自由起び場面での行動を観察し,その遊びと幼児の行動の分析を通じて,実際の遊び場面での行動と場依存型ー場独立型次元の認知スタイルと関連がみられた.5.自己主張に関して.典型的なスタイルを示す二人の幼児(自己主張の強い子,自己主張の弱い子)に対する日常の保育者の働きかけをカテゴリ-化して分類し,それぞれのスタイルにどのような指導が行われているかを縦断的に検討した.その結果,自己主張の強い幼児の依存や甘えに対する保育者の対応は,説明,言語的・行動的受容や言語的・行動的拒否が多く,自己主張の少ない幼児による同様の行動に対しては言語による受容が多いことがわかった.また保育者の子どもの行動の対する対応は,スタイルによって異なり,純期によって変化することを示した.以上のような結果をもとに,現在,個人差を活かす年間カリキュラムやデイリィプログラムを検討中である。
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