火災事態からの脱出を想定した危機状況において、曲がりくねった狭い立体廊下を大集団(41名)と小集団(6名)が脱出する状況を設定し比較検討を行った。迷路の形状は大集団の場合も小集団の場合も同じてある。大集団実験ではパソコン41台を、小集団実験では6台を通信ケ-ブルで連結した。被験者は各コンピュ-タの前に一人ずつ着席した。そしてキ-ボ-ドの特定のキ-を連続打叩することによって迷路の中を移動した。移動及び方向転換に伴って迷路の立体的線画(壁や廊下)が変化した。また、ある被験者の視野の中に他の被験者が存在している場合には、その他者が棒形状のものでディスプレ-上に表示された。被験者は各々、この棒が指し示す方向とその大きさによって他者までの距離と他者の移動方向を把握可能であった。大集団の場合には41人のために被験者当人を除く40本の棒(他者)が存在した。小集団の場合は棒は5本であった。迷路の道幅は2車線とした。故に各被験者の直ぐ前に他者が1人しかいない場合にはその横をすり抜けることは可能だが、2名の他者が平行して進行している場合にはそれらの他者を追い越して進むことはできないようになっていた。故に直前と直後にそれぞれ2名の他者が平行して存在していて、その間に挟まれた場合にはサンドイッチ状態になり、他者4名の内の誰かが動かない限り前方にも後方にも動けないという状況が出現する。即ち渋帯が生じる。被験者はこのように渋帯に巻き込まれたり、あるいは他者との衝突を繰り返しながら出口に向かって進行する。 実験の結果、個人脱出の場合や、小集団(6名)脱出の場合は脱出のピ-クの実験開始後3分前後となり、ここに集中した。一方大集団の場合には脱出の最頻値は7分前後となった。しかしここに集中することはなく、3分から15分にわたるなだらかな脱出が観察された。大集団におけるこのような現象は、迷路の中で発生する混雑の規模と頻数の程度が個人や小集団と比較した場合かなり大きいことに起因するものと考えられる。
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