新しい知識の生成について、大学生および専門家を対象に、3つの研究を行なった。研究1では、領域固有の内容的知識および領域普遍の記憶術的スキルが、新しい事実と既知の事実とを結びつける説明ないし関連づけを導く解釈を生成するのにいかに貢献するかを扱った。それによると、(a)豊かな内容的知識を持つ場合は、「ありそうな事実」を溶易に有意味化しうるのみならず、「ありそうもない事実」が与えられた時でさえ、それを「ありそうな事実」に変えるための付加的条件を容易に産出しうること、(b)記憶術的スキルの有効性は、学習形式によって限定されているが、その範囲内では、どのような事実が与えられた時にもこれを既知の事実と関連づけうるよう再解釈するのに役立つこと (c)内容的知識と記憶術的スキルの双方ともが高い時には、学習課題の要求に従って一方を主に、他方を従に使うこと、などが見出された。 研究2では、料理について経験が多く、関心が深いほど、既知の手続き(調理法)を要素に分解し、それらを柔軟に再配列したり、他の調理法の要素と取替えたりしうるかを検討した。こうした柔軟性は、大学生の間ではほとんど観察されず、したがって既知のレパ-トリ-の新しいないしは珍しいヴァリエ-ションを求めたさいにも、こうした要求を充たしながらなおかつ「おいしい」と思われる理料を考案することは因難であった。 研究3では、書道、絵画、彫刻などの専門家とのインタビュ-を通して、彼らの新しい作品へのイマジネ-ションがどのようにして生じるかを追求しようとした。多くの場合、彼らの創作には外的源泉があり、これを独身の手法で変換して新しい作品の母型とすること、この産出とイマジネ-ションの明確化の間に相互作用のあることが示唆された。
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