研究概要 |
今年度に行った研究から得た新たな知見は、以下の通りである。 1.1音節についての弁別実験を行い、McGurk効果の生起するのが聴覚的レベルか音韻レベルかについて調べた。その結果、調音運動を表わす視覚刺激が音韻知覚に及ぼす影響は、聴覚的レベルであることが示された。 2.単語レベル・文レべルでのMcGurk効果を調べるための予備的な実験として、母音随伴効果についての実験を行い、母音知覚と子音知覚との関係について調べた。実験はAX法による係留実験を中心に行った。その結果、(1)係留効果においても母音随伴効果が生じ、子音の知覚が母音によって規定されることが認められた,(2)母音随伴効果は音韻カテゴリではなく音響的特徴によって生起することが認められた,(3)母音随伴効果の持続時間は短く、3秒以上では有効ではない,等の知見が得られた。 次年度は、以上の知見をもとにして、次の実験を計画しいてる。 1.単語レベル・文レベルにおけるMcGurk効果について,有意味語と無意味語の場合を比較して調べる。 2.調音運動ではなく文字提示が聴覚情報に与える影響について調べる。 3.母音の知覚と子音の知覚におけるMcGurk効果について,それぞれ実験を行って調べる。 等について取り上げ、視聴覚情報の統合過程についてより深く堀り下げた研究を行い、音韻知覚モデルの中に視覚情報からの要因を組み入れてモデルの精緻化をはかる。
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