研究課題/領域番号 |
02610065
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
村瀬 嘉代子 大正大学, カウンセリング研究所, 教授 (70174290)
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研究分担者 |
柏女 霊峰 上智大学, 社会福祉専門学校, 非常勤講師
伊藤 研一 大正大学, 文学部・社会福祉学科, 助教授 (60184652)
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キーワード | ライフサイクル / 両親像 / 家族像 / 養護施像 / 施設での養育 / 厳父慈母 |
研究概要 |
前年度まで、われわれは幼児から成人にわたるライフサイクルの中で、(1)両親像、家族像がどのように形成され、成長変化をしていくか(2)そうした過程の中で変わらず根底にあるものは何かについて、調査研究を進めてきた。結果としていくつかの重要な知見を得た。今年度ではさらに、両親像、家族像が混乱したり、十分に形成されないことが予想される養護施設の子どもを対象に調査研究を行った。(1)実父母の養育が十分とは言えない場合の両親像・家族像のありよう、(2)施設での養育が(1)をどう補い、変容し得るか(3)適応状態に(1)と(2)はどの影響するか、(4)今までの調査結果との比較検討、について新たな示唆が得られることを目的とした。施設は子供にとってみれば、家庭に相当するところであり、その場所へ調査に行くことは極めて侵襲的となる危険があるため、方法論としては以前からの子供に対する方法論に加えて、いくつかの慎重な配慮をした。調査研究の結果、幼児の場合被験者数が限られているため、はっきりとした発達傾向を見いだすことはできない。しかし事例の中には、生後すぐに実母と分離していながら、いわゆる典型的な「厳父慈母」的回答をし、なおかつ「おかあさん(熊)」と声に出すこと自体が胸のうちに甘美な感触を呼び起こしていると思われる表情をしていた子どもがいた。小学生以上の場合、現実の生活状況に即した質問をしたため、実際の両親像については明らかにされない。しかし女性職員を通じて「ほめてくれる」「看病」「悲しいとき慰めてくれる」という体験をし、しかもそれを求めてもいる姿が浮かび上がって来た。これはまさに今までの調査研究の被験者が母親に求めたものである。また理想の両親の関係として、厳父慈母とよき連携が上げていることは、両親像や家族像の混乱が想定される場合でも(あるいは混乱があるからこそ)厳父慈母(特に慈母像)が中核に存在していると考えられる。
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