「農村地域における在宅ケアの実態に関する比較研究」という課題のもとに、二つの地域を選定し、その実態調査を行った。ひとつは長野県臼田町にある佐久総合病院が在宅ケアを行っている地域(臼田町、八千穂村、佐久市、南北相木村、川上村など)であり、もうひとつは、新潟県の大和町にあるゆきぐに大和総合病院がカバ-する地域(大和町、六日町、塩沢町など)である。この両地域について、一年間集中的な実態調査を行うなかで以下のことが明らかになった。この二つの地域では、明確な理念をもつ複数のリ-ダ-が存在し、その強力なリ-ダ-シップのもとに包括的な地域医療が推進されている。その共通点は、総合病院を核としながら、他の関連施設、たとえば老健施設、特別養護老人ホ-ム、農村検診センタ-などとの有機的連帯のもとに活動が進められていることである。つまり、予防と治療と福祉のネットワ-ク化が最終的に目指されねばならないとする共通認識が存在する。その中に「在宅ケア」も位置づけられており、病気を病院で治療するということをはるかに超えて、退院者の「継続看護」、病気への対応、セルフコントロ-ル、不断の健康管理という広い文脈の中で、「在宅ケア」の取り組みがなされている。この点からして、医師だけにとどまらず、医療プロフェッショナル(看護婦、保健婦、PTなど)の組織化が不可欠であり、二つの地域いずれもが、こうした組機化への運動を重要視していることがわかる。また、このような活動のプログラムを問題にしたり、問題点や改善点を検討するものとして、「在宅ケア委員会」や「在宅ケア実行委員会」などの組織づくりも果している役割が大きい。いずれにせよ、この両ケ-スともまだその活動は緒についたばかりで、経済的コスト、アンパワ-、患者の増加といった問題にどう対処してゆくかという大きな課題をかかえている。
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