定期市(あるいは一般に露店市場)の盛衰を左右する要因を、「川下の要因」「川上の要因」「行政の介入」という三つのグル-プにわけて考えたい。(ここでは商品の流通過程のうち、消費者により近い部分を「川下」生産者により近い部分を「川上」とよぶ。) 1川下の要因。たとえば大型店の出店は、消費者にとって購買先の選択の幅の拡大を意味する。大型店と定期市の競合はおおむね定期市の衰退を結果する。とくに昭和40年代以降の定期市の衰退は、この要因によってほぼ説明できよう。 しかし、露店市場の様々な商習慣には大型店では代替できないものがあり、この独自性は露店市場の部分的なリヴァイヴァルにつながる可能性をもっている。 2川上の要因。各地の公設卸売市場の開設以降、その地域の定期市がそれまでもっていた生産者と問屋をむすぶ機能は消滅ないし低下した。大正期以降の定期市の衰退は、この出来事によって説明できるかもしれない。 しかし、第一に、公設卸売市場に出荷できない規格はずれの生産物(はね品・B品といわれる)がある。これらの売りさばきル-トのひとつとして、定期市が利用されることがある。第二に、相対的に就業機会に乏しい地域では、(個人ごとあるいは世帯ごとの)多就業の一機会として定期市が利用されることがある。これらの二点は定期市の衰退とは逆の方向に作用するだろう。 3行政の介入。定期市が道路上に開設される場合には、「道路占用権」の問題を通路として行政当局から種々の介入がなされる。この点についてはとくに新潟市の明治期以降の歴史資料を材料にやや掘り下げて検討した。
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