本年度においては、(1)東京大都市圏の変動についての資料収集・分析、(2)地域開発政策の歴史的経緯と現状についての資料収集と分析、(3)主要な調査地点である下伊那の現地調査、この三点を中心にして調査を行なった。 1.東京圏の人口、産業構造に関する統計資料、産業政策、都市再開発政策に関する資料を収集・分析した。東京圏の経済・社会的機能が中枢的なものへと特化されるに従い、高度技術部門も外周部へと分散を始めており、地方の産業活性化の可能性もここに存在している。2.これと平行して、地域開発政策の全国的動向についても、分析を行なった。現状では地域産業の育成のためには、工業開発にとどまらず総合的な地域作りが不可欠となっているが、しかしそのために必要な基礎条件については手探り状態である。この問題を解明するために、機械工業に焦点をしぼり、その地方分散の歴史的過程についての分析へと調査の重点を移した。3.飯田を中心とする下伊那地域の調査を集中的に実施した。飯田市においては精密機械工業の成立と現状が本年度の調査主題であった。さらに、天竜村を事例として産業基盤をもたない外周部の山村についても調査を行なった。下伊那地域においては多様な地場産業が存在しており、今年度取り上げたのは両極端の事例に過ぎない。平成3年度においては、多様な形態の産業・地域を取り上げ、複合的な全体像へとアプロ-チする予定である。4.下伊那と比較の為に、電機工業中心の産業構造へと転換を成功させた典型として米沢地域の調査を行なった。両地域の比較から、機械工業が定着する一条件として、地域内産業ネットワ-クという要因を指摘することができる。5.本年度の調査結果を整理する意味で、地域産業を分析するための一般的枠組みとして論文(「地域産業へのアプロ-チ」)をまとめた。この枠組みを参照しながら平成3年度の調査を進める予定である。
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