平成2年度の研究の進行状況は以下の進りである。1研究課題を成立させる前提条件の検討。党派性の崩壊は日本のみならず、欧米諸国に共通に見られる傾向であることを確認するためにThe Gallup Pollの英米版、ドイツ・フランス等のヨ-ロッパ版をはじめ、各種の外国調査資料を整理検討した結果、アメリカの場合、1960年代後半からインディペンデントの増加の傾向が認められ、ヨ-ロッパ諸国においても、ほぼ同時期から政党支持の調査で“not adherents"と同答する比率が上昇する傾向にあることが認められた。また日本においては、1970年代前半から「支持政党なし」の無党派層の増加が注目され、しかも各種調査結果を通して、DK・NA層が減少するという注目すべき傾向も確認された。党派性の崩壊は先進諸国における政治意識の変容を示す共通の特徴であることが確認された。2理論的研究。選挙行動の安定性モデルから変動モデルへの理論的移行をfloating voterhvpothesesを中心に検討し、この仮説の現代日本の政治意識・投票行動への適応可能性、政党支持(帰属)態度の強度の低下、分割投票への傾向等、理論的諸問題について検討を進めている。この検討と関連させて選挙の動態分析の理論枠組の研究を並行して進めている。3実証的研究。選挙関係の資料について、都道府県および主要都市の選挙管理委員会が作成した選挙ならびに行政統計資料、大学等研究機関の実施した調査研究成果をほぼ全国的規模で調査収集するとともに、選挙区を大都市型・都市型・準都市型・準農村型・農村型に区分し、それぞれ代表的な選挙区について実態調査を行い、関連する資料の整理を続行中である。また、政治意識の特徴を明らかにするために調査を行い、その結果について目下分析を進めつつある段階である。平成3年度においては理論的研究を深めるとともに、引き続き関係資料の補足調査を行う予定である。
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