現代日本における政治意識・投票行動の趨勢として注目されるのは、政党支持態度の流動化と、それに伴う投票パタ-ンの変化である。本研究の課題である党派性崩壊はこの事態を指している。本研究では第一に、党派性崩壊の動向と特徴を解明するために無党派層を中心に調査し、流動的投票者仮説(floating voter hypothesis)の検証を通して政治意識投票行動論の再検討に資する基礎的な知見を得ることに主眼を置いた。その成果として、まず、国際比較の観点からThe Gallup Pollの英米版やフランス版をはじめ各種の資料も併せて検討した結果、無党派層の増加が、日本を含め先進諸国における政治意識の変容を示す共通の特徴であること、また、現代日本における無党派層の属性や階層帰属態度、集団帰属態度の特徴を政堂支持者のそれと比較対照した結果、無党派層は自民党支持者と対比的な傾向を、社会党支持者とはある程度まで類似した傾向を持つことが明らかになった。この知見は、現実の選挙結果から指摘される保守回帰の支持基盤の解明にあたって興味深い視点を与えてくれる。第二に、選挙に関する調査資料を収集し、選挙研究ならびに選挙行政に資するデ-タ・バンクを作成した。具体的にいえば、自治省作成の選挙結果調等の資料、全国の各選挙管理委員会による選挙に関する世論調査報告書、選挙に関する研究書などを整理し資料編として掲載した。とりわけ、各選挙管理委員会による世論調査報告書のなかには、政治意識・投標行動の研究にとって有用なものが多く含まれているにもかかわらず、これまで殆ど活用されず、散逸の恐れもあるので収集に努めた。調査の結果、得られた資料は、都道府県125件、政令指定都市60件、県庁所在都市21件、その他の都市36件に達した。併せて年齢別投票率の調査結果など関連の資料35件を収録した。また、選挙関係の研究書(単行本)は416冊である。
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