本年度の研究は、貧因児童の学力・進路実態とその規定要因の把握を目的に、要養護児童の進路と学習指導に関する施設に対する調査票調査、施設面接調査、文献収集調査を行った。 1.施設調査票調査では、施設票及び児童票の回収を行い、85%の回収率を得た。中学卒業生の高校進学に関する意識は、85年の社会事業大学調査と比して顕著な変化がみられ、中卒後の進学保障の重要性が過半の施設の認識になりつつある。また学校・教師との関係では配慮を認める施設が多い。これらを反映して中卒者が進学も急速に伸びつつあるが、それ故に一層、入所児童の圧倒的な比率にのぼる低学力の問題状況が浮かび上がった(小学生高学生の45%、中学生の61%)。結果として地域の学区・学校のあり方と施設の処遇方針との複雑な関連の中で養護児童の進路は規定されていることが明らかになっている。今後多変量分析や個別童票の分析を加えて、低学力と進路の規定要因を一層分析する。 2.施設面接調査では中国地区、近畿地区、関東地区の諸施設を訪門し、面接した。処遇理念、措置児童の選別、日常の処遇のあり方、家族との関係のあり方、学校との関係、地域社会との関係、アフタ-ケア-等、多様なあり方が観察された。上の施設調査票の結果を解釈する上で重要な知見が得られた。 3.文献収集調では、英・米・独・日の貧因・要養護児童の調査や処遇に関する大献を収集した。今後更に補充すると共に、目録作成を行い、貧因・要養護児童に関する処遇・教育の主要なアプロ-チの変動と成果を整理する。 次年度は、今年度の調査票調査の結果に基づき一層組織的な施設及びケ-スの観察を行う。
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