研究課題/領域番号 |
02610088
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
蘭 信三 熊本大学, 文学部, 助教授 (30159503)
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研究分担者 |
田間 泰子 熊本大学, 文学部, 講師 (00222125)
丸山 定巳 熊本大学, 文学部, 教授 (00039968)
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キーワード | 異文化適応 / 中国帰国者 / 移民 / 本国帰還者 |
研究概要 |
本年度は、熊本県の中国帰国者を対象として彼らの生活実態をインテンシヴに調査した。調査は、県庁及び市町村の行政資料の収集から始まり、自立指導員とボランティア国体への聞き取り調査、そして中国帰国者からの直接の聞き取り調査へと進めていった。この結果、以下のような中国帰国者コミュニティがきわめて重要な存在であることが判った。 熊本県内には昭和48年から63年までに計99世帯が中国から帰国し、そのうち8世帯が東京・京阪神等の大都市圏に転出、平成1年現在で91世帯244名が定住している。その内訳は残留婦人世帯32、残留孤児世帯15、それらの2世世帯44となっている。居住地域は、やはり中心部の熊本市に7割(64世帯)が集中し、そのうち3割余(18世帯)が特定市営住宅に集住しているが、その他は分散的に住んでいる。109名が就労し、一部には、中華料理店の経営や事務的専門的仕事に就労している場合もあるが、今のところ単純労働就労が一般的である。また、57名が就学しているが、大学生はわずか2名で、高校生も9名と、進学についても困難を抱えている。結婚も、帰国者同士が大判である。このような中国からの帰国というバックボ-ンを共通とする人々のかなり同質的な状況と特定住宅への集住を喫機として、帰国者自体による団体などは組織されていないが、ここに一種のコミュニティが形成され、この周辺の人たちも含めた情報ネットワ-クが張りめぐらされている。これは、ほとんどの帰国者にとって、住宅、就職、日本語学習、進学、年金、結婚から噂話にかんするあらゆる生活情報の重要な源となっている。そして、この中国帰国者コミュニティは、小規模ではあるが、帰国者に係わる日本人(自立指導員、行政係官、ボランティア)との関係を含めてサブグル-プ化し、情報源の獲得がパワ-の源になっており、日本語の堪能な残留婦人を中心としている構造が判明した。
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