本年度の研究では何より高齢者の生き方を示唆するような尺度を模索することに主眼があった。その結果「主体的で新しいことにどんどん挑戦するといった未来志向的な自己関心追求型」「過去の仕事を振り返り、それを他者に認知してもらうことにより自己の存在証明を行うといった過去志向他者認知追求型」「家族や友達と一緒に今のままの生活の繰り返しの中に喜びを見いだすといった現在志向で安定を求める型」等が高齢者の生き方のスタイルとして示唆された。ライフスタイルは、常に夫婦や家族のそれと連動しているようで、どちらかと死別したような場合、ライフスタイルの変化を余技なくされる可能性がある。また高齢者の生き方や生きがいは、その社会への適応という点と結び付いており、その意味で高齢者の生き方を規定していると思われるのは、日常生活をどの程度遂行できるのかという能力、他者とどのように関わりを持っていくかという能力、そしてその活動が自主的、主体的であるのか、という3点であるようだ。高齢者のライフスタイルは、こうした適応条件と結び付いている。面接にとったある高齢者(67歳A氏)は自己の関心をどん欲に追求していく第1のタイプの人で今でもコンピュ-タに挑戦するような先進的な高齢者であったが、交友関係はあまりない。しかしそれをフォロ-するような形で、妻がうまく機能していた。人はよくくるが、ほとんどは妻の友達である。そして妻は、「おそらくこの人は、私かいなくなったら一人では暮せないだろう」と語った。また「人生100年テスト」という文章完成テストに自分史的色合いを持たせた調査票を通してみた高齢者の生き方では、男性が社会との関わりについて多く言及しているのに対して、女性は、主として家族関係に限定して自己の人生を再生させていくものが多いといった特徴がみられるがこうした点は彼らが生きた時代等との配慮から再構成して吟味すべきであろう。
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