本研究の目的を達成するため、宮城県の北上山系山村や典型的な平担地農村で集中的に研究調査し、特に若柳町では生涯学習に関する町民意識の調査研究を実施した。その他、農山村地域における現地調査によって多くの資料を収集している。しかしまだ分析の途上にあり、課題も多く残され、研究代表者は今後も研究を継続し当初の目的を達成していく計画を持っている。 弱い経済基盤に立ち高齢化が進む農山村においては、地域社会の持つ子どもの社会化機能の弱体化が懸念されている。つまり農林業では生活が維持できず地域外に就労の機会を求める住民も多く日常の地域生活が高齢者で営まれているため、地域文化の継承が大変な困難になっている。それらの山村で、かつて地域の子ども達から大人たちまで参加した伝統行事を再生し、また創造しようとする動きがある。地域社会を存続させ、よりよい地域文化を生み出していくためには子どもの社会化の新しい枠組みを設けていくことが必要である。一方、生涯学習の必要性が次第に強くなってきている社会的状況もあり、地域住民の学習ニ-ズに応え、地域社会で住民が生きがいのある生活を獲得できるようにすることが行政的課題にもなっている。それは地域の教育力の向上と合わせて各市町村で現実化しつつあると考えられる。そこで、地域を生涯学習社会として確立しようとしている農村の事例研究を進めた。宮城県若柳町もそのような町の一つであり、21世紀をにらみ長期的視点から生涯学習社会づくり(まちづくり)という新思考の観点に立って教育体制の整備を図ろうとしている。地域の教育力の向上はこのような行政的努力があってこそ期待できるし、可能性を持つであろう。そこで本研究では、「生涯学習に関する町民意識の基礎調査」を実施し、こうした町づくりが進められようとしている地域で生活する人々の意識や行動を明らかにした。
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