本人と分担者が世話人である現代イギリス教育研究会では、平成4年度に次のような会員の報告があった。新井浅浩「イギリス初等教育の全国評価について」、山内太郎「イギリス・ナショナル・カリキュラム政策について」、荒木道利「ナショナル・カリキュラムとトピック学習」柳田雅利「CPVQの資格改革について」、沖清豪 「1992年教育白書『選択と多様化』」。本人は、イギリス研究フォーラムで、口琢男「イギリス・ナショナル・カリキュラムの展開」を報告した。平成4年度報告及び資料集(III)で本人は、「イギリス中等カリキュラムにおける一般教育と職業教育の結合と展開の諸相」をまとめ、研究分担者は「シックス・フォームの試験」についての論文を掲載する予定である。 平成4年度の研究から得た知見については以下のことを上げることができる。ナショナル・カリキュラム関係では、対象教科が中核教科(国語・算数・理科)に絞られる傾向が伺われた。その理由は教師の評価活動が授業活動を制限することになったことが報告されているためである。ナショナル・カリキュラムの政策分析では、労働党・教師団体は内容自体については基本的に支持する態度に転じた。保守党内・政府部内のナショナル・カリキュラム法制の解釈をめぐり若干の対立・動揺を生じている状況について、小学校ではナショナル・カリキュラムが伝統的な教育方法形態としてのトピック学習に組み込まれて実施される傾向が示され、中等学校ではナショナル・カリキュラムは、LMS下の学校経営や教科教室レベルのカリキュラム革新の経験等の主体的条件によって左右されていること、判明した。他方、政府(教育省)の教育白書「選択と多様化」はナショナル・カリキュラム(共通教育課程)のうえに、父母の選択によるカリキュラムの専門化(芸術、外国語、商業実務)や技術カレッジの創設の構想を展開し、1993教育法案の準備を進めている。
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