研究概要 |
本年度は研究の最終年度にあたり,過去2年間の作業を基礎に,新しいインタビュー調査を行なって,研究の総合化・まとめをはかることをめざした。 前年度に実施した昭和59・60年度岡山大学開催の社会教育主事講習受講者に対する追跡調査(郵送調査)については,集計結果をまとめ,日本社会教育学会研究大会で,全体的傾向についての報告を行なった。その際,社会教育職員としての自己イメージを中心に分析を行なったが,地球社会との関わり方,人間関係形成能力などの点について,専門性との関連で興味深いものがあることを示した。『日本教育新聞』においても紹介されている。 また本年度は,この調査対象者の中から約30名を選び,それぞれ1時間半から2時間にわたるインタビュー調査を実施した。職務の具体的内容,専門性の内実,専門性の形成プロセス,社会教育主事講習の評価の4側面を設定しての調査であるが,特に過去における自身の社会教育関連の経験に注目したものであった。これは,テープおこし・編集の作業を進め,現在分析途中であるが,地域特性やさまざまな状況のちがいに応じて多様なタイプの社会教育専門職員が存在していること,行政出身者と教員出身者との間にはかなり大きな社会教育ならびに職員に対する意識の差があり,そのことが専門職員としての活動の差にもつながっているのではないかということが示唆されているようである。 生涯学習の時代といわれる状況で,学校教員としての経験が社会教育職員としても充分意味をもつはずなのであるが,その連携についても,まだ社会教育職員としての固有の専門性の明確化は必らずしも充分ではないことがうかがえた。事例を増やし,より一般化できよう深い継続的な研究が要請されるところである。
|