研究概要 |
本年度の研究では,先年度の研究成果をふまえ,特に,政治教育の教授理論の構想の解明,政治教育の教科書の分析,政治教育の実際の授業の分析を行った。 1.政治教育の教授理論の解明では,初等教育段階の政治教育に言及しているニチュケ(V.Nitzucke),アッカ-マン(P.Ackermann)を,中等教育段階の政治教育に言及している理論家として,個人の自由(オプチオネン)を中核にして授業を構想するハイリゲン(W.Hilligen),学問のカテゴリ-を中心にして授業を構想するズト-ル(B.Sutor),子どもの興味を中心にした授業を構想するシミ-デ-ラ-(R.Schmiederer),およびガ-ゲル(W.Gagel)を取り上げて,彼らの授業理論を明らかにした。今後取り上げなければならない政治教育の理論家としては,ギ-ゼケ(H.Giesecke),クラウセン(B.Claussen),フィッシャ-(K.Fischer)等がいる。 2.政治科の教科書『政治,経済,社会』の単元構成と,マス・メディアの単元を詳しく分析した。教科書は,新聞の記事や資料を手掛りにして,討論する,分析する,比較する,調べるという多様な活動を生徒に促すような質問が多く含まれている。言論の自由を扱ったこの単元では,ナチ時代に言論の自由のために死刑にされた歴史的事実を導入に用い,言論の自由が当たり前になっている現代の生徒にコンフリックトを起こすように工夫していある。 3.「新しい青年運動の規模と意議」(ベルリンの第10学年,総合制学校での授業)を分析した。この授業は教師の質問をもとに話し合うことで授業が進行しているので,特に教師の質問から授業過程の構成を分析した。教師の質問はよく階層化されていて,OPHなどの視聴覚教材を用いて生徒の興味を引き起こすように工夫されている。
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