本研究は、現代教育理論の再構築にあたってジョン・デュ-イの哲学がどのような意義をもつのかを検討することを目的とする。そこで、A.シュッツ、R.ロ-ティ、J.ハバ-マスなどに代表される現象学・解釈学・批判理論の諸研究の成果を踏まえて、デュ-イ哲学の現代的意義を解明した。 1、デュ-イの「自然主義的形而上学」は、存在論と認識論の融合による「経験の形而上学」の構築をめざす。それは、経験や状況を脈絡をもった全体とみなす「脈絡主義」の哲学である。この立場にたつ教育論は、絶対性や永遠性を求める「基盤主義」のそれではなく、経験の可能性を徹底的に追求するそれである。 2、デュ-イの「前反省的状況・直接経験」は、シュッツの「生活世界」と類似した構造をもつ。さらに、デュ-イの習慣論や共有経験論には現象学的な「志向性」や「相互主観性」の概念が見出せる。 3、デュ-イの「探究論」は、日常の不確定状況の変容と自己の意味の体系の拡充という二重の機能をもつ「統一された論理的方法」を構築する試みである。 4、デュ-イの「社会的探究」とハバ-マスの「コミュニケ-ション的理性」は、より包括的な合意(間・間主観的合意)の構築という共通目的を共有する。それは相異なる見解をもつ二集団の対話によって達成される。ロ-ティはこの立場を「デュ-イ=ハバ-マス路線」と呼び反対するが、我々はデュ-イたちの立場を支持する。 5、デュ-イにとって、教育はたえざる探究の過程である。たえざる「コミュニケ-ション的探究」は「相互成長」の母胎であり、「協働探究者」育成の必須条件である。それは、事実知・理論知・道徳知・実践知がたえず再構築され拡充される、生涯にわたる過程である。
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