研究概要 |
1980年代以降,日本における科学技術の発展は半導体,産業用ロボット,コンピュ-タなど先端技術の実用化を著しく促進させた。なかでもICやLSIに代表される電子部品技術の発達をベ-スにしたME(マイクロ・エレクトロニクス)化の進展という面で世界をリ-ドしている。こうしたME化は,単にME機器の生産ということだけではなく,製造業全体を捉えて,わが国産業の様相を著しく変貌させた。また,労働者の労働内容,熟練,教育訓練にも大きな影響を与えていくことになった。当然のことながら,中小企業における場所と大企業でのそれとは進捗度,波及の程度によって異なることは言うまでもない。 鉄綱産業の労働はどのように変化し,企業内教育に与えたインパクトはいかなるものか。まず,製銑工程の労働のあり方は1980年代後半以降のAI(人工知能)の導入によって大きく変化した。高炉マンの有していた高度な判断能力と熟練がAIというメカニズムに置き換えられたことにより,オペレ-タ-はモニタ-を監視しつつ,ディスプレ-に表示された命令指示のままに操作をすることになった。下工程といわれる圧延工程の労働については,高炉に比べるとコンピュ-タによる制御がやりやすいことから,人間の制御労働と経験的熟練はより不要になっている。一方,制御労働や経験的熟練の比重の低下と裏腹に,トラブルシュティングに対応する能力や顧客の要求に応じて高品質の製品を作り出す能力が強く求められている。こうしたラインのFA化はオペレ-タ-に対してメンテナンス能力をもつことを要求した。機械コ-スと電気コ-スに分け,整備技能2級程度の技能レベルを目標に,ラインマンの多能工化教育としての整備技術教育が実施された。
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