研究概要 |
本研究は日本と特に関係の強い韓国、中国、タイ、マレ-シアの4か国及びわが国について、心の生活の根底にある価値意識(主として労働観)を実証的に究明しようとした。 本研究の代表者は、昭和42年来、これらの国における学校生徒の価値意識に関する現地調査を実施し、資金の許す限り集計分析を進めてきたが、多くの回答紙が研究費不足のため未処理であった。そこで本研究では、まず(1)各国の未処理のデ-タの整理として、タイ(企業従業員)、マレ-シア(生徒、大学生、親、教師)、中国(漢族・ウイグル族・カザフ族・シボ族の生徒,親,教師)で得られた質問紙の整理分析を行った。その結果、たとえばタイの場合は、日系企業従業員の間では企業における労働のあり方としては日本的経営式になじむ態度を示すが、個人的生活場面ではタイの伝統的価値パタ-ンを示していることが明らかにされた。また中国のケ-スでは、漢族と少数民族の間で対照的な結果が明らかになった。たとえば漢族では比較的個人意識が強く、他方ウイグル族などでは社会意識が強い。ただし漢族、少数民族ともに天安門事件以後、青少年の間では国家社会意識が急速に強化されていることも見い出された。 (2)日本の場合については、前述の4か国で実施したものと同じ内容、すなわち、人生観、社会観、国家観、宗教、道徳観、労働観、職業観などの項目からなる質問紙調査を実施した。質問紙調査は福岡市内・近郊の小・中・高・大学で実施し、計1,230の児童・生徒・学生から回答を得た。これらのデ-タは、現在回収・整理中であり、結果がまとまり次第、日本以外の4か国の調査結果と比較検討を行い、関係5か国の価値意識の整理総括を進める予定である。
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