研究概要 |
平成2年度における研究課題は、第1に文献による米国教科書行政関係の先行研究の把握、第2に各州教科書行政関係判決例の検索と分析、であり、すでにこれら2点の研究実践は完了した。 それによると、米国教科書行政には、極めて多様なシステムが各州間に存在することが改めて確認されるとともに、それら各州に存在するシステムには一定の類型化が可能であることもおおよそ検証された。 また、これら教科書行政は、歴史的に見た場合、19世紀後半あたりから全米的傾向として州集権的傾向を示してきていることも判明した。 判例分析上の知見としては、州の主権内に存する教育事項中に必然的に教科書業務も包摂されること、従ってかかる業ムは、州が憲法及び制定法規定に違反しない限り、州がその全権を保持することが確認された。州教育委員会、郡教育委員会、地方教育委員会、教育行政職員、教師すら、州の創造物として教育にかかわっているのであり、あくまでそれら各々の行使する権限は、州から付与されているにすぎないとされている。 親,生徒の教科書行政関与権は、関係判例からは帰納されなかった。私立、宗派立学校に対する教科書提供(無償化)は、各州間において全く反対する判決が提示されており、一致した結論は帰納されていない。 次年度以後.これら判例分析及び文献による先行研究からの知見と制定法規定分析からの知見をつきあわせることによって、判例・制定法両側面からの有機的総合的分析を試みたい。
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