本年度は、特に1950年代から1960年代初期を中心としたカリフォルニア州教科書行政の実情を分析して、同州教科書行政の具体的発展状況を明らかにするとともに、残存する諸問題を考察吟味した。 その結果、カリフォルニア州教科書行政関係機関は、その創設主体であるはずの州議会から様々な形での影響を受けていること、しかも、その影響が州議会の構成メンバーである各議員を選出している各種圧力団体からのものであり、州教科書行政の順調な実施と発展に大きな影を落している実態が明らかとなった。本来、政治的に中立な立場を保持すべき教育行政機関の職務に対して、極めて厳しい政治的圧力が存在していること、そして、かかる圧力に対して、州教育行政機関は決して完壁な防御体制を保有しているわけではないことが判明した。 しかしながら、カリフォルニア州教科書行政関係の諸機関、具体的には、州教育委員会及び州教育課程委員会は、これらの圧力に対して常に柔軟かつ辛抱強い対応を展開して、それら圧力からの影響を最小限度に食い止めており、州教科書行政の健全な活動の展開に努力している姿を強く看取することもできた。 本来、教育が、その存在を依拠する社会の政治的、経済的、社会的状況と完全に離れて、独自に機能することは不可能であるとしても、教育関係機関の主体的立場からの活動を保障、確立することは、教育を受ける主体である被教育者の権利保護という点からも、極めて重要であろう。その意味において、同州教科書行政関係機関の一連の活動は一定の評価を受けるに値するものであったといえよう。
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