研究概要 |
水田耕作を中心とする所有および耕作面積が大きい、福島県会津地方の村落において、家族構成に著しい変化が、過去10年間に起きていることが明らかである。三世代,四世代家族の割合が減り、老齢者夫婦の割合が増加した。原因は、後継者を含む、農業者の子供達の離村である。 昭和50年代前半までは、親夫婦と同居する子供達が、土日曜に農作業を手伝い、家から通勤しながらフル・タイムの職に就いていたが、昭和60年代以降、急速に、子供夫婦が別居し、通勤が可能であるにもかかわらず、親の住む村落から、職場に近い会津若松市内へ移動した。 このような別居は、子供の側からの、農業後継者となることの断固とした決意の表明であると、子供の世代も親の世代も受けとめている。その決意が固いことの証明として、いずれも自分達の自宅を新築し、住宅ロ-ンを借り受けて、親の意向によって再び同居することが困難な状況を作り出している。その結果、村落内の様ざまな共同作業は廃止されたり規模が縮少され、イエとイエの間の相互扶助の制度は著しく損われている。老齢者に対する地域住民によるかつての援助は、平均年齢の急速な上昇のために、極めて実行が難しい。 子供の世代の離村の大きな原因は、「農業に何の将来性も見られないから」というのが大きなもので、その点は親の世代も認めている。収入の確保は現状で可能ではあるが、子供に愛を与えられない職業には就きたくない、というのが最大の理由であり、伝統的な日本の家族制度は、水田耕作を主とする集約的農作業と、世代を超えた耕地の継承とによって支えられていたことが証明されたことになる。
|