研究概要 |
2年目の本年度は,近畿・中国・四国・九州の10カ所を選択して調査を実施した。各地の農村・山村・海村を訪問し、使用状況,製作技術,その他について調査し,また各地の博物館等も訪問して収蔵民具を見学した。一方,文献研究も行なったのであるが,その結果,興味あることがいくつかわかってきた。特に注目すべき点を次にあげると, 1,背負い様子について 東北に顕著な頭ぬき背負い様子は近畿以西の西日本ではまったく見られない。無瓜型と有瓜型の両タイプは西日本にもあるものの,特に西日本に多いのは有瓜型であり,無瓜型は辺地に多い。また,有瓜は豊後カイコというほど豊後山師の活動に伴って普及した。一方。豊後カイコは朝鮮のチゲによく似ているが,九州一円でこれを朝鮮カルイとか唐人カルイという所もあってその伝播深を示唆している。 2,二つ縄について 背負い縄の一種の二つ縄は西日本に顕著であり,東日本ではほとんど見られない。陸摩半島や九重地方によく見られる一本縄背負い法とも異るこのタイプの背負い縄の出自は興味深いが,西日本各地を調査した結果,これが一本程タテ回し負いに発するものであり,その移行形が各地に残存していることもわかった。 3,山樵具としてのカタゲウマは炭焼き民具の一つであり,背負い梯子とは関係のないことがわかった。 4,エビス信仰について これは西日本に顕著で,個人,共同ともに祀られているが,東日本では個人的であり,祀らない浦もある,代りに竜王神の信仰が多いことがわかった。 5,火の神について アイヌのアペフチカムイに対し,西日本ではいろりの火よりもカマドの火神(竈神)を重視し,西日本南端の九州地域では竈神と火の神を双方重視している。琉球との比較が必要である。
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