研究概要 |
平成4年度は庵美および沖縄の調査研究を主眼として実施した。庵美では庵美大島や徳之島の農具,漁具,運搬具,信仰具,社会生活具などの物質文化の調査に力を注ぎ、沖縄では沖縄本島および久米島,宮古島,多良間島,石垣島などの農具,漁具,運搬具,信仰具,葬具などを調査した。その結果,いろいろな興味深いことがわかった。それらを次に列挙してみる。 1,運搬具について。庵美および沖縄の頭がけ背負い運搬具のティル(篭)とティルの緒(カサギジナ)はその分布,構造など,地域性があり,その地域性の比較によってその成立史がわかること。ティルはそれを頭がけにしないで,手に持つか腰にさげるかする方法が古く,それは又小型でおり,名称もイビラクというが,イビラクはティルの厚型であることがわかった。 2.民具の素材について。運搬具をはじめ諸民具の素材に南西諸島では竹がよく使われ,草や木も用いられているし,具穀も使用されている。竹はホウライチカやリュウキュウチカがよく利用されている。草木ではトウモドキヅルとビロー樹の幹,葉やアダンの気根,葉などがよく使われていて,独特の形態の民具を作り出している。こうした南西諸島の竹や草木利用の状況は東北地方の樹皮利用状況に対応し,西日本の石,竹,板利用の状況とも対応していて興味深い地域となっている。 3.農具,漁具なども南西諸島のものはわが国の同系民具の古態を示していると共に独自性をもつものもあって,ヤマト(本土),アイヌの民具と比較すると興味深いものがあり,いろいろと貴重なことがわかってくる。又,墓制,葬制についても,琉球,ヤマト,アイヌ比較の中で捉えるといろいろな見方ができて興味深いものがある。そして,南西諸島の文化はトカラ列島を境にして異ることが民具からも実証できる。
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