研究概要 |
2年度にまたがる研究であるので,初年度である今年度は、研究史の整理と問題点の明確化、および関係史料の調査・収集に力を注いだ。前者については概ね作業を果しえたが、一部未入手の文献もあり、それらも含めて次年度に作業を完了したい。後者については、信濃および伊勢・山城・大和・摂津・河内・和泉・播磨など畿内とその周辺の幕領関係史料の調査・収集を行い、三井文庫,内閣文庫(国立公文書館)・東京大学史料編纂所所蔵の関係史料も調査・収集した。関係史料の保存状況は地域によって差があるが、関係史料の収集作業を順調に進めることができ、享保改革末期の各地の幕領での年貢増徴の実態をうかがうことができる史料や、延享元年の幕府勘定奉行浦尾春央の西国幕領巡見に関する史料、同じく神尾の幕府勘定所での演説内容を書き留めた史料、年貢増徴に抗して各地の幕領で展開された百姓一揆に関する史料、など学界未紹介の貴重な史料も多く収集することができた。今年度は初年度であるので研究成果は公表しなかったが、次年度には、中国・四国・九州幕領の関係史料の調査・収集も行い、その作業もふまえて本研究課題について総括を行った上で、研究成果を公表する予定である。なお、収集した史料の一部を「延享2年正月幕府勘定所での神尾春央の演説書」と題する小論で紹介した。『瀬戸内海地域史研究』第4輯(発刊末定)に収載予定である。また、信州幕領への神尾の巡見についても小論を発表する予定である。
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