研究概要 |
平成2・3年度の研究において活字化されたものとしては,『「中右記」に見える貴族と日記』(山中裕編『摂関時代と古記録』所収,平成3年6月刊),『平安時代の稲荷祭と七条大路』(伏見稲荷大社刊『朱』35巻所収,平成3年10月刊)がある。また既に原稿は提出しているものの,刊行に至っていないものとしては,『小右記』(山中裕編『平安貴族と日記』所収),『平安貴族の住居と生活』(山中裕編『源氏物語を読む』所収),『後白河院の近臣・信西入道』(古代学協会編』後白河院一動乱期の天皇ー』所収)の三点がある。また口頭発表としては,平成3年5月,国学院大学の国史学会大会において,『平安京における七条大路』と題する発表を行った。 貴族の遺した日記(古記録)を通して,当時の貴族子弟の意識について考えるにあたり,まず藤原宗忠の日記である『中右記』に焦点をあて,当時の貴族の記録に対する考えを考察した。そして貴族子弟の意識を考えるには,何よりも彼等の生活の場であった平安京の有様,また彼等が日々暮した住居についての理解が必須であることを痛感。そのために,祭礼を通して平安京の有様を考え,そして一般に寝殿造と呼称された住居に暮した彼等の生活についても概観した。 また古記録に関する各論として,摂関時代の古記録類の中にあって,質・量ともに他を抜きん出ている藤原実資の『小右記』を取り挙げ,考える機会をもてたのは大きな収穫であったといえる。 更には多少時代を下り,後白河院政期の下級官人の生き方を振り返ることにより,広く平安時代の貴族の実態を窺うことができた。 今後,これらの研究の成果を踏まえ,平安時代史研究を深化させてゆくことができる確信を得た。
|