研究概要 |
第一に、中国キリスト教伝道史の主要な潮流について考察した。唐代の景教については、ネストリウス派キリスト教の東方伝道の由来および、景教の経典について調査し、特に景教の特質について究明した。元代より始まるカトリック伝道については、明・清時代のイエズス会宣教師による西洋学術の紹介を調査し、いわゆる宣教師文化の実態と、それが中国文化におよぼした影響を考察した。また典礼問題については、その展開と歴史的意義について検討した。清代に始まるプロテスタント伝道については、中国の近代化との関係についても調査し、同時に義和団を頂点とする反キリスト教運動についても考察した。なお中国東北(満州)およびモンゴルに対するキリスト教伝道についても、その歴史的経過を具体的に究明した。 第二に、入華プロテスタント宣教師マッカ-ティ-の中国および日本における活動について調査し、中国語著作の中では『真理易知』に重点をおいて考察を進めた。彼は1870年代には日本政府の要請を受け、外国人教師として東京大学の前身である開成学校に赴任し、明治初与のわが国の大学教育の上に大きな足跡を残し、その後も東アジアにおける外交方面のしごとに貢献している。これらのことがらについても具体的に究明した。 第三に、同じく入華プロテスタント宣教師であるW.A.P.マルティンの中国伝道初期における中国語著作について、直接原本に当って調査した。そしてこれらを、(1)寧波方言ロ-マ字表記の諸著作,(2)教義解説の諸著作,(3)キリスト教説話,(4)中国語学習書の4種に分類して考察し、彼の多方面的な活動の姿を具体的に明らかにした。
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