本研究の目的である「近畿周辺圈」と「史的」ということから本年度は『浪速聞書』(文政2年、1819年)『新撰大阪詞大全』(天保12年・1841年)の語彙1300語について大阪市から北西に当る兵庫県豊岡市、また南西に当る兵庫県洲本市および四国徳島県徳島市と大阪市とにおいて、その語が現在どのようになっているかを調査した。 調査の方法として、まず、当該地点に生まれ育った人で、移住経歴3年以内の成人で50才以上の人であること。研究者が面談で一語一語につきその意味内容を説明し現在も「そのままの形で使う」「少し語形変化した形で使う」「少し意味変化した形で使う」また、「現在自分は使わないが他人が使っているのを聞いたことがある」「全く聞いたこともない、知らない」の形に分けて答えてもらった。上記の4地点における結果1300語の約60%は語形変化・意味変化していても「使う」であった。これについて詳細は平成4年3月刊『甲南国文第39号』に(「浪花聞書」「新撰大阪詞大全」の語彙)として発表する。 「社会言語学的研究」の面では、福井市・敦賀市・洲本市において大阪方言として定着している語20語について「近所の親しい友人と話すとき」「大阪の人と話すとき」「東京の人と話すとき」どれを使うかをたずねた。これの調査方法としては各地点の中学校1クラス男女計約40名と成人男女1名ずつの調査をした。これについての結果は平成4年3月刊『関西方言の社会言語学(仮題)』(世界思想社刊)で「近畿・中国両方言の表現形式の地理的変化」として発表する。
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