方言は地方都市を中心としてその周辺地域に広がって行くものである。大阪方言は関西一円に強い勢力をもって広がろうとしている。 江戸末期・140年前に大阪の女ことばとして生まれた指定(断定)助動詞“ヤ"は今や全関西に広まっている。 同様に江戸末期の大阪方言の書『浪花聞書』(文政2年・1819年)・『新撰大坂詞大全』(天保12年・1841年)の語彙が現在(平成2〜4年)に大阪市にどのように残っているか、また、どのように形態変化・意味変化しているか。結果は「『浪花聞書』『新撰大坂詞大全』の語彙」(甲南国文・第39平成4年)に記したが、『浪花聞書』は67%・『新撰大坂詞大全』は37%が残っている。その品詞別・語彙別を示した。年月が経つにつれて方言はその周辺に広がるものという意味から大阪市をめぐる地域として兵庫県豊岡市・洲本市と四国の徳島市について調査した。 〈史的研究〉 ことばは必ず、話し手と聞き手との間で成り立つ。誰が、いつ、どんな状況で話すか。そのとき、共通語と方言とをどう使い分けるか。友人に対して、目上の人、初対面の人に対して、近所の店で、大阪の店で、東京の店で。50才代の男女と、中学校1クラス男女について調査した。 〈社会言語学的研究〉神戸市・姫路市から岡山県備前市までの各市町・福井市・敦賀市・津市・兵庫県朝来郡から豊岡市を経て鳥取市までの各市町・洲本市・徳島市の近畿周辺地域での実態。これらの調査語としては楳垣実『京言葉』(昭21)・前田勇『大阪辯の研究』(昭24)の語彙・文法を資料とした。その結果は「福井・敦賀・洲本三市方言の動向ー大阪弁の広がりー」(甲南女子大学研究紀要第27号平成3年)・「近畿・中国両方言の表現形式の地理的分布」(関西方言の社会言語学〈末刊〉)に記した。
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