福建省北部の方言は周囲の呉、客等方言と比較的早期の〓方言との混合方言であるという観点が益々強くなってきている。崇安、浦城、松渓、光沢、邵武等の方言から〓語的成分を分離抽出して、建陽、建甌などの〓方言とともに、方言比較の材料として使えるようにしなければならない。〓省最北端の浦城方言(城内)は中国の学会の統一意見では呉方言の変種であるということになっているが、調査の結果、〓語と呉語と官話の混合方言である可能性が極めて強い。しかも、最も低層はやはり〓語であり、その上に呉語が重層しさらに最上層として官話の層が重なっていると考えるのが正しい。浦城方言は呉語(主として浙南系呉語)の語彙を大量に吸収しているので見かけ上呉語であるがごとく見なされているのである(「浦城話的〓語成分」外国語教育論集14号掲載予定)。比較音韻論的に見た〓南語の範囲は非常に広い。泉州、〓州はもちろん、潮州、雷州、海南もまた〓南祖語再構の材料となるのである。のみならず、これまで〓東方言として分類され、〓南方言から区別されてきたいわゆる福州語等もまた音韻体系からみると〓南音系と大同小異であり、従って〓南、〓東の中間方言とされる興化(〓田、仙游)方言もその比較論的地位は福州に習うはずである。〓田方言は〓南系と〓東系の混合方言であり、〓南方言がその基層であることは間違いない。〓中方言は中国側の研究者によれば〓北方言と〓南方言の中間形式であるというが、もしそれが事実なら比較論としては極めて興味風いのであるが、簡単な記述報告を見ているだけで自分自身で調査確認できていないのは遺憾である。研究の過程で多くの方言が実は混合語もしくは混合方言であることを見出した。このような観点を取り入れ、これら諸方言の総合的な比較論を現在進行させている。
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