ここ数年の間、特に1987年から1990年にかけて、かってないほどの日系アメリカ人による優れた文学作品、及び収容所での生活体験を記録に留めようとする本が出版された。それに呼応して、カリフォルニア州を中心に日系アメリカ人を含むアジア系アメリカ人の文学者をパネラ-にしたカンファレンスが何回か開催されている。近年のこうした顕著な動向は、アジア系、及び日系文学を評価し、アメリカ文学史のなかで正当に位置づけていこうとする作家や研究者の要請を反映するものである。報告者は、1989年度、全米で最も注目された作家の一人であるシンシア・カドハタにインタビュ-を行い、彼女の小説『フロ-ティング・ワ-ルド』の作品の意義を紹介した。また、収容所の生活を詠い、現代の社会問題に関しても積極的に発言しているミツエ・ヤマダの問題意識を明らかにするエッセイをまとめ、ついで、日系の作品を編纂し、編集者としても日系の文学の地歩作りを固めようとしているジャニス・ミリキタニの生の声を資料として残すべくインタビュ-記事にまとめた。日系の短編小説家として高い評価を受けているヒサエ・ヤマモトや劇作家として注目されつつあるワカコ・ヤマウチ、優れた詩人として著名な批評家から高い評価を受けながら広く知られる機会のなかったトヨ・スエモトに直接会い、体験談を聞き、資料を集めてきたので彼女達に関する本格的な文学評価を行う。また、サンフランシスコ州立大学のジェフ・チャン教授、日系新聞に評論を発表して波紋を投げかけている中国系作家のフランク・チンや、ニッケイ・レビュ-誌のヨ-イチ・シマツ氏、1930年代に日系二世の文学運動を推進したドクタ-・ヤスオ・ササキ達から見解を聞き、今日の日系文学研究に必要な歴史的背景を学んだ。
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