研究概要 |
今回のプロジェクトは,チェコの同化ユダヤ人カフカが1912年に見て自己のユダヤ性に目ざめ,かつ大きな影響を受けたといわれるポ-ランドの旅回りイディッシュ語劇団の出しものの台本に本の12本のうち,半分にあたる6本(約430ペ-ジ)を2年間を費してヘグライ文字からラテン文字に転写し、これらの台本に頻出するヘグライ語やスラブ語起源の単語や語句などゲルマニストにとって理解困難な語彙にドイツ語で注釈をつけることが目的であった。 以上二つの作業のうちラテン文学への転写については、筆者がまずパソコンを用いて台本を転写したものを協力者である海外在住のネイティブスビ-カ-に送り,それに手が加えられたあと再度筆者が訂正して完成稿を作成するという手順を踏んだ。この作業は、テキスト自体が20世紀初めのもにであるため多くの誤値や正書法上の不統一に満ちており当初の予想よりはるかに困難な作業となったが,それでも最近ようやく双方の努力により完成にこぎつけ,平成3年3月末日までには2巻本として公表される見通しとなった(第1巻はすデに公表済)。 しかし語句の注釈については当初の予定より遅れており,現在まだ作業の段階にある。遅延の理由は(1)注釈を要する語彙の数は予想よりカなり多く(全部で3000語程度),また整った説明を行なうにはネイティブスピ-カ-といえどもかなりの労力を要すること、(2)日本に住む筆者と海外在住の協力者との通信に日数がかかること,それに(3)最近は協力者が休調をくずしているため仕事があまりはかどらないこと等による。従ってこれの完成にはあと約1年を要する見込みである。
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