本年度の研究は大別して、(1)言語資料の収集、(2)言語資料の分析、(3)基礎理論面での考察、の三項目である。 (1)言語資料の収集としては"empffindlich"など、いくつかの言語表現にかかわるデ-タを、テキストデ-タベ-スから収集し、パソコンのリレ-ショナルデ-タベ-ス・ソフト上を操作するための変換を行った。 (2)言語資料の分析としては、結局、言語表現"empfindlich"の用例162例について、総合的な観点から記述を行う作業で、時間切れとなった。リレ-ショナルデ-タベ-スを用いた記述作業の利点は、記述作業の中途で問題点が発見された場合に、記述項目、記述方針などを容易に変更できることである。他方、問題が生じ、記述項目の変更を行ったりした場合、記述済みのデ-タについても、すべて見直しをする必要があり、その作業にかかる作業量が予想以上にかかってしまった。問題にぶつかる度に、その解決のため、より深い新たな考察が求められ、作業の進行としてははかどらなかった。しかし、その結果、経験的な記述作業の積み重ねとして、言語の意味の問題についてのいくつかの興味深い知見が得られた。言語表現の意味の揺れの記述の観点から考察すると、意味の核心部分というのは、非常に抽象的な構造に還元される。そして、それぞれの具体的な使用例における多様な意味解釈は、その言語使用における、文脈関係、話者の表現意図、常識による推論、談話における話題との調和などの複雑な要因に依存している。この例についての考察結果は、次年度にまとめる予定である。 (3)基礎理論面での考察としては、本研究の基本問題である、言語的意味と世界についての知識の関係について考察を進め、論文として発表した。
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