研究概要 |
『御製五体清文鑑』に掲げられている回語(新ウイグル語)の満州文字表記された18,671語全てを,文語形式及び漢語形式とともにパ-ソナル・コンピュ-タを用いてデ-タベ-ス(ミクロコスモス)に入力完了した。清朝期の『清文啓蒙』『欽定満漢対音字式』『同文韻統』などを通して当時の満州語表記法を検討し、この回語・口語形式を写した満州文字表記システムを明かにした。満州文字表記は著しく漢語に同化された当時の北京満州語の音韻体系をよく反映しており、一般の満州語文法書などに掲載されている文字と音の一対一の対応システムは適用できなかった。満州文語成立当時の表記法が漢語への音韻同化にともなってその内容を変えていった様子が理解できた。また、満州文字表記形式を、現在の新ウイグル語やチュルク諸方言あるいは「畏兀児館訳語」(「華夷訳語」)の新ウイグル語などと比較することによって回語・口語形式の約半数の決定が終わった。この時点で、この回語が現在ではトルファンの辺りの小方言として残っている、かつての北部方言の性格を色濃く表していることがわかった。さらに残りの半数の形式を決定し、全形式のリストを提出するなら、18世紀新ウイグル語の唯一の辞典として利用できる。因みに『御製五体清文鑑』の単語を用いて作成された辞典として、羽田亨等による『満和辞典』が知られている。
|