研究概要 |
1.基本的には研究は順調に進んでいると信じている。ただし本研究に取りかかってから時間的には短かいので,具体的研究成果を語るには至っていないが,特に数回の出張を通して国内での資料状況を確認できた点は,次年度の研究進展のための基礎になると信じている。 2.具体的には,アメリカ合衆国で特に刑事被告人の人権等との関連で近時問題になっている司法取引(答弁取引)についての論争を跡づけることによって,現行法上のその問題点を整理することができた。 3.さらに,当初はイギリス絶対王政期の裁判記録上司法取引(答弁取引)と推測しうるものを無差別に抽出してきたが,2.で上述した整理を通じ,それらの概念的広がりが相当にありそうであること,及び近時問題となっている司法取引はその中の特殊なものであるらしいことに気付き,近代における司法取引の概念規定の見直しを行い,改めてその厳密な概念にあてはまるものを過去の史料の中から捜し出すという史料操作の見直しに迫られた。 4.以上の知見・反省の上に,現在は特に,最近遂次刊行されつつある16・17世紀イギリスの地方への巡回裁判の記録史料を改めて統計的に処理している。今後はそこから得られるはずのデ-タと,当時の各種法書から得られる当時の法理論とをつき合わせ,さらには当時の社会・経済・政治的要因と関連させながら,なぜ司法取引(答弁取引)がイギリスにおいて,それも一定時期に出現・発展し,またその後にいったん衰退してしまったのかを,理論的に解明する予定である。 5.本研究に関わる具体的成果発表はない。
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