研究概要 |
本報告書は丹後田辺藩の裁判記録資料の目録とその解題である。 (1)田辺藩裁判資料は、丹後田辺牧野家領の郡奉行所の(1)「訴状及判決書 簿冊」285冊、(2)代宮・郡奉行所「公事出入吟味物伺進達控」類22冊、(3)「御代官吟味同心吟味等咎申渡留」・「監獄捕亡方吟味咎申渡留」各々1冊からなる。(1)の内容は、近世大名領の郡奉行所の裁判記録と裁判関係文書の写しである。裁判法廷への召喚、出延、出廷した奉行所関係者、原告、被告、公事宿の宿主、身元引受の町・村役人、証人などから法廷での問いや答えなどを逐語的に記述している。記録の最後に、文書の一覧目次が作られ、文書は一件袋に封入されたと思われる。判決の執行やその後の立法・争論の再発などが記載される場合がある。(2)は裁判に際し上部へ伺った上進書とそれに対する指令下達書の往復文書であり、(3)は吟味の判決記録である。 (2)谷口房治家文書の内郡奉行所の「刑罪筋日記抜書」「掟背之部」4冊、同「雑記」4冊、及び「刑罪筋問合」「諸色問合」各々1冊を目録化した。 (3)補論として、ヨーロッパロの中世・近世の裁判記録と比較するため!Judicial Records,Law Reports,and the Growth of Case Law,ed.by J.H.Baker のうちの英独の部分を要約的に紹介した。 (4)「訴状及判決書簿冊」は、裁判の克明な逐語的レポートであり、その詳細さはヨーロッパにも例をみない。しかも、英国のイヤー・ブックが准公的で私的なものであるのに対して、裁判所役人の職権的作成記録である。その点で比較法制史的にも注目すベき資料であり、同種の史料の全国的かつ全時代的調査が必要なことが判明した。
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