本年度は本研究課題に関わる文献を数多く購入した。また公共政策の決定要因に関する諸仮説の理論的検討もほぼ行いえた。文献研究を通じて、日本においてもこの間公共政策研究が盛んになってきており、その中で比較の観点から公共政策の決定要因をめぐる議論を検討した研究も数多く出されていることも発見した。欧米における研究では、数量分析に基づく多数の国の比較分析から導き出された普遍的要因では説明のつかない事例の研究が重視されてきている。そして個々の国の公共政策の特殊なあり方を規定づけた歴史的構造的要因を究明する研究も出てきていることを知った。 現実政治では80年代前半を主導した新保守主義=新自由主義による福祉国家批判が現実にはそれほど社会政策関係予算を削減しなかったこともあって最近では各国間の公共政策の動向は収斂化傾向にあるようにも見える。とはいえ、管見によれば、そうした80年代後半以降の動向をも視野に入れて理論的かつ実証的な分析を行った研究は今のところ数少ない。 本年度は、6月末から9月中頃まで「東欧の政治変動」の研究のため、ポ-ランドのワルシャワ計画統計中央大学に客員研究員として短期留学し、その成果をまとめることに時間もとられたこともあり、購入した文献を中心に内外の研究動向の検討を行うことで精一杯であった。本年度の研究の成果の発表は来年度に期したい。
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