本年度の研究実績は次のとおりである。第一に、公共政策関係、福祉国家関係の文献を引き続き購入したこと。第二に、公共政策研究の前提として政治体制論に関する理論問題の整理を引き続き行ったこと。第三に、先進国の公共政策の決定要因及び公共政策諸結果に関するデータを収集、整備したこと。第四に、日本の公共政策に関する文献の検討と資料の収集・整理を行ったこと。 先進国の公共政策をめぐる議論はこの1、2年の間に大きく様変わりしてきている。80年代前半において主導権を握った新自由主義=新保守主義も一時ほどの勢いがなくなっている。アメリカや日本を見るとネオ・ケインズ主義の復活ともいえる状況が生まれている。そうした中で各国の公共政策の特徴が失われてきている。それゆえに70年代後半から80年代前半にいたるまでの頃には公共政策データの分析によって比較的クリアーに当該国の公共政策の類型的特質をあきらかにすることができたが、80年代後半以降を視野に入れると従来型の分析方法では比較の視点から有意味な検討結果をえることがむずかしくなってきている。また日本の公共政策や経済パフォーマンスを一面的に賛美する論調もかげを潜めてきている。「豊かさな社会」日本における生活の「貧困」をめぐって政府の公共政策のあり方あるいは「会社主義」とも呼ばれる日本の企業中心主義的な社会構成のあり方を問題とする議論も増えてきている。 科学研究費補助金による、今年度及び過年度研究を通じてえられたそうした認識を踏まえて、先進国の比較公共政策の研究を引き続き進めていくつもりである。
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