この研究によってえられた成果は次のとおりである。 第一に、この間先進国の公共政策、福祉国家、政治経済学に関する文献、資料が数多く公刊されたがそれらのうちで主要なものについて購入することができたこと。 第二に、80年代後半に至るまでの、先進国における公共政策、福祉国家関連データの収集ができたこと。 第三に、公共政策研究の前提としての政治体制論をめぐる論議、具体的には多元主義、ネオ・コーポラティズム、デュアリズムあるいはステイティズム、新制度論といった欧米の比較政治学の理論動向を的確に把握できたこと。 第四に、公共政策の比較分析の方法についての理解が深まったこと。特に一時期注目を浴びた多数の国を対象とする統計的比較研究について疑問が出され、決定的事例あるいは例外的事例に焦点を当てた歴史的比較研究が重要視されてきていることを発見したこと。 第五に、80年代中頃以降新たな変化を見せてきている先進国の公共政策、福祉国家をめぐる問題状況についての理解が深まったこと(新自由主義=新保守主義の行き詰まり、社会民主主義の苦悩、福祉国家の停滞等)。 第六に、研究成果として、『自由民主主義体制分析』の一部、「コーポラティズムの登場」(『概説西洋政治思想史』所収)そして「比較公共政策研究=比較政治経済学についての覚書」(『龍谷法学』第26巻第3、4号所収)にまとめることができたこと。ただし、後二者の論文は印刷及び他の執筆者との関係で大幅に発表が遅れた。
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