研究概要 |
本研究ではまず,「情報化」の進展との関連で,可能な都市の均衡パタ-ンを探求し,個々のConfigurationがいかなる条件の下で現出するかを分析した。都市構造の可能な均衡パタ-ンは9種類であるが,分析結果によれば次のことが言える。「情報化」が進展する以前は,ほとんどすべてのコミュニケ-ションがfaceーtoーfaceによってなされ,企業はheadーofficeとroutineーfunction sectorを分離せずに都市中心部に立地させている。これに対して,「情報化」が十分に展開し,routineーactivityが行なうコミュニケ-ションの多くが情報技術によってなされる下では都市内のすべての立地点が企業と家計によって混合的に利用される。興味深いのは,このパタ-ンの下では,企業全体は分散化されるが,routineーactivityはheadーofficeから分離されないことである。それ故企業が行なうfaceーtoーfaceコミュニケ-ションのための旅行距離はかえって増加することになる。企業の2つの機能が分離して立地するのは,いわば「情報化」の進展の途中の段階においてである。 「情報化」に伴うもう一つのポピュラ-な仮説は「在宅勤務」の普及である。本研究の第二の仕事として「在宅勤務による労働供給をも考慮した社会で,情報通信費用の低下が都市構造におよぼす影響を分析した。その際,「在宅勤務」による労働供給は家計の第2のメンバ-である〈housewife〉によってなされると想定される。「情報化」の結果,都市住民の効用は必ず増加するが,その他の内生変数への効果は不確定である。特に情報システムの改善によって都市規模は縮少する可能性がある。「情報化」が進展し,在宅勤務による労働賃金が上昇し,産業的土地利用が拡大するとき,都市規模が縮少する傾向が強い。在宅勤務労働の賃金率の上昇は家計の都市中央部への住宅立地を促すことになる。
|